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物の値段は案外いい加減なもので、それが世界で1つしかない物であれば、
相場など存在しないわけで、それを持っている本人が1万円と言えば1万円、
100万円と言えば100万円になります。
不思議なことに目の前に同じ物を置かれても、
その値札に1万円と書いてあれば1万円の物に見え、
100万円と書いてあれば100万円の物になんとなく見えてくるものです。
しかしそれをいくらなら買うかは人それぞれで、1万円でも高いと感じる人もいれば、
100万円でも安いと感じる人もいて、その物の価値(値段)は自分で決めるしかないのです。
中古カメラではこのようなことがよく起こります。
安価で売られていたレンズがある日突然、雑誌などで紹介され人気が出ます。
当然、カメラ店では在庫量が減ってきます。
オイルショック時にトイレットペーパーがなくなるという話が広まり、
我先にトイレットペーパーを買おうとスーパーに走った主婦たちと同じように、
それを見た人が焦って残りのレンズを衝動的に買います。
需要が増えても供給量は今まで通りですから、当然相場は上がります。
このように値段が上がっていくこともあれば、この逆の連鎖によって下がっていくこともあります。
要するに株と同じことです。
しかし株と全く違うのは、仮にそのレンズの価格が¥0−になったとしても、
描写力はなにひとつ変わらないということです。
ならば、安い時に買ったほうがいいに決まってます。
この価格の高騰、下落を見事に再現したレンズがあります。
Distagon21mmF2.8MMJです。
このレンズの4年前の評価は低すぎました。その性能の高さとは裏腹に全く人気がなく、
その頭でっかちなスタイルからショーケースに並んでいるとキノコが生えているようにも見え
「誰かキノコ狩りに来てくれないかなー」などと話していたものでした。
しかし、その後デジタルカメラの普及とともにその高性能ぶりが知れ渡り人気はうなぎのぼり、
もちろん価格も高騰。それでも入荷すればその日には売れてしまうという日々が続きました。
そして現在。すっかり価格は落ち着きました。今が適正価格のように感じます。
今後、このレンズの値段がどう変動するかはわかりませんが、
5DMkIIの発売によって、このレンズの持っている更なる性能が認知され、
また価格が上昇することも十分に考えられます。
このレンズにはそのくらいの力は十分に備わっているのです。
案外、今が嵐の前の静けさなのかもしれません。

Distagon21mmF2.8MMJ  ¥138,000〜¥178,000−