エルノスターというレンズをご存知でしょうか。
4群4枚というシンプルな設計のこのレンズは
3群3枚のトリプレットの発展系と言われ
トリプレットや3群4枚のテッサーでは実現できない
当時としては明るいレンズを目指し開発されました。
設計はZEISSのレンズ設計者として名高いL・ベルテレ博士で
確かに明るく独特のボケをするという大きな利点はあったのですが
レンズ性能的には各収差の補正が甘くテッサーに比べると
描写性能は今ひとつという感は免れませんでした。
そこでL・ベルテレ博士はこのレンズの設計をさらに発展させて
わずか5年後には誰もが認める名レンズ”ゾナー”を完成させたのでした。
ゾナーの描写性能はエルノスターのそれを全てにおいて凌いでおり
更なる明るさも確保するというまさに理想的なレンズとなったのです。
こうなるとエルノスターの価値はと言えばもはや安価なことだけ
しかしそれであればテッサーがありますので
エルノスターはすっかりその存在意義を失ってしまいました。
その後テッサーとゾナーはZEISSの代表的なレンズとして発展していく一方
エルノスターの存在は完全に忘れ去られてしまったのでした。
結局、僅かな期間しか表舞台に立つことが出来なかった
エルノスターはその希少性から今では高値となっています。

話は変わって、とある日、お客様よりお聞きしたのですが
一眼レフ用のレンズでエルノスタータイプの構成の標準レンズがあるらしいのです
それもその方がお知りの限りにおいてはただ一つだけ。
それはPRAKTICAR 50/2.4。
CarlZeissがドイツが東西に分断されることになった時
東側に帰属することになった、ある意味本家CarlZeissと言っても過言ではない
M42マウントの始祖であるメーカー”プラクチカ”
そのプラクチカがM42の後継マウントとして1978年に発売した
通称プラクチカバヨネットマウントのレンズです。
このマウントは日本では普及する事はなく、かなりマイナーな部類になりますが
CarlZeiss好きには避けては通れないレンズ群です。
しかし私も恥ずかしながらPRAKTICAR 50/2.4は全く触れ合う機会が今までありませんでした。
と言うのもその薄い形状から中身はテッサーだとばかり
思い込んでいていたからです。
でも実際にレンズ構成図を調べてみると4群4枚で
明らかにエルノスタータイプとなっているのです。
(F2.4でテッサータイプではないと気づくべきでしたね)
ということでさっそく試写してみました。
BlogPaint
_MG_0485
_MG_0473
_MG_0467
カメラは5DMkII。
レンズ後部の突起が僅かに干渉するみたいで
縦位置で下向きの時に数回ミラーがひっかかりましたが
撮影しているうちにひっかからなくなりましたので
これならもしひっかかってもヤスリで2〜3回こすれば大丈夫でしょう。
描写の特徴としては、素直な前ボケに対して
後ボケは独特な世界観があります。
好みは分かれるでしょがBiotar58mmF2あたりがお好きな方は
お好きなんではないでしょうか。
DSC00004
DSC00005
DSC00006
こんなに面白いレンズが今はまだ安価であります。
でもいざ探してみると、滅多にお目にかかることがないレンズですので
興味のある方はこの機会にお早めに。


PRAKTICAR 50mmF2.4(EOSマウント付き、前玉小コートスレ)
***お買い上げ、誠にありがとうございました***