約30年前の私の愛機はキヤノンA-1とT90でした。
その頃、New FD35mmF2.8を常用レンズとしていた私は
A-1にその35mmF2.8を、そしてT90にはNew FD300mmF4を装着という
かなり偏ったレンズ構成で撮影を楽しんでいました。
そろそろもう1本レンズを追加しようと思い立った
私の脳裏に浮かんだのは85mmでも100mmでもなく
もっと広角のレンズでした。
そこで28mmと24mmで悩んだのですが
どうせ買うなら、より画角が広い方が良いだろうという単純な理由で
New FD24mmF2.8を購入しました。
35mmの画角が染み付いていた私の眼にとって
そのレンズの画角は目新しく何を撮影しても新鮮な感覚でした。
これに味を占めた私はその数年後さらに広い画角のレンズを物色し出したました。
そんな時に先輩カメラマンから紹介されたのがTokina 17mmF3.5 RMCでした。
当時はレンズ選びをする際には実際にそのレンズを使っている人の意見を聞いたり
カタログを集めて比較研究したりしていたのですが
中でも一番簡単で購買意欲を掻き立てられたのがカメラ雑誌の記事でした。
それはカメラマンが実際にいろいろなレンズを使って作例を載せて
そのレンズについて感想を書くというようなものなのですが
そこに書かれている記事を読んでいるとレンズ性能は明らかに
カメラメーカー(ニコン、キヤノンなど)≧レンズ専門メーカー(タムロン、シグマなど)という形で書かれていました。
今思えば、その記事を書いているカメラマンが何らかの形でカメラメーカーのサポートを
受けている場合が多く、そのカメラマンが書いている記事は当然・・・ということなのですが
そんな社会の仕組みをまだ理解できていなかった私は
そこに書かれている記事を鵜呑みにし
レンズ専門メーカーのレンズに明らかな偏見を持っていました。
そんな私にその先輩はかなりの熱弁で
Tokina 17mmF3.5 の良さを語っていたのですが
私の耳には
”だったらキヤノンの17mmはもっと良いだろう”
という風にしか聞こえませんでした。
結局私はNew FD17mmF4を購入したのですが
このレンズは私の体質には合わず良い写真が撮れないばかりでなく
このレンズを付けてファインダーを覗くと気持ちが悪くなるという症状まで現れ
わずか数回の使用でこのレンズとはサヨナラをしました。
この原因は不明ですが、その後Distagon18mmF4を愛用していることを
考えると単純に画角が合わなかったということだけではないように思うのですが・・
DSC08121
DSC08122
そんな私の目の前に今Tokina 17mmF3.5 RMCがあります。
店頭での買取だったのですが中玉にヨゴレ、絞りがネバリという状態で
実用では少し厳しいものがありこのレンズの商品価値を考えると
ジャンク品として現状販売というのが普通の選択です。
でも、こんな思い出があるレンズの描写を30年ぶりに確かめたいという
気持ちを抑えきれずレンズ、絞り、ヘリコイド全て調整に出してしまいました。
綺麗に蘇ったTokina 17mmF3.5 RMC。
さっそくテスト撮影をしてみましたが、これがかなり良い。
さすがにコントラスト、発色などは弱い感は否めませんが
歪曲収差の少なさ、周辺部の解像力などかなりのものです。
(ちなみに最短撮影距離は25cm)
DSC08117
α7、開
DSC08118
α7、F16
DSC08119
α7、開
DSC08120
α7、F16

このレンズを着けてファインダーを覗いても気持ちが悪くなるということもなく
あの時、先輩の言葉を信じてこのレンズを買っていたら
私の広角レンズライフも変わっていたかもしれません。


Tokina 17mmF3.5 RMC (Y/Cマウント)  ¥FU.M
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*** SOLD OUT、 お買い上げ ありがとうございます*****